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映画と山とファッションのブログ

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バッファロー ’66

2020年7月14日 ブログ

#オフビート青春映画
#ストックホルム症候群
#ヴィンセント・ギャロ監督・主演
#クリスティーナ・リッチ
#髭とボイン


オフビート映画


 
 Off-Beat(オフビート)のアメリカ映画、とりわけ、 90年代のインディペンデント映画を良く見返しています。
 
 オフビート映画とは、登場人物の行動が普通よりズレていて、シナリオの起承転結も釣られて跳ねる。寝落ちする一歩手前のアドリブ音楽的な映画ジャンルです。
 
 ビートに乗り切れないストーリーの流れになかで、何拍かずれてインパクトが強いシーンが急に飛び込んでくる映画。
 
「なんの話ですのコレ !?」と突拍子の無い展開に突っ込みながら、ジワジワと不思議に心地良くなる映画。
 
 『ナイト・オン・ザ・プラネット( 1991年)』、『シンプルメン( 1992年)』、『トゥルー・ロマンス( 1993年)』、『恋する惑星( 1994年)』、 90年代は名作オフビートの宝庫でした。
 
 “ボーイ・ミーツ・ガール”から始まって、誰かに恋をして、勝手に勘違いをして、追いかけっこをする。最後まで誰も死なない映画。
 
 

 
 内向きの幸福を深掘りする当時の雰囲気が最近、特に気になります。
 

 
 本日のブログは、90年代オフビート映画の最高峰で、当時のファッション・アイコンであるヴィンセント・ギャロが監督・脚本・音楽・主演の『バッファロー‘66(1999年公開)』をご案内します。


ビリー・ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)

 
 

 
 とにかく、主人公のビリー・ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)の洋服は、目眩がするほどカッコ良い。
 
 ラグランスリーブのライダース・ジャケット、3ポケットのスラックス、サイドジップのブーツ、すべてが長身細身のビリーにジャストフィットのサイズで作られている。ギャロ以外には、絶対に着こなせないスタイル。
 
そんなビリーが、映画の冒頭から挙動不審気味に街を走る。
 

 
 それも内股で、カマキリの様に手の甲を真正面に小さく振り上げて、モジモジしながら走る。
 
 トイレを探しているようだ。
行く先々で、丁寧な言葉遣いで「洗面所をお借りしたいのですが?」と尋ねるが、ことごとく断られる。どこか、怪しい雰囲気がする。
 
 鳶色の青い瞳、無造作な髭と黒髪のオールバック、鷲鼻と痩けた頬、あのクールなギャロが額に脂汗している。
 
 膀胱が耐えきれない、ダメだ、尿漏れの寸前だ。
 
 どうやら今回のギャロはダサイらしい。
 
 ミュージシャンで画家・写真家、モデル・俳優、「 SWITCH」、「 CUT」、「 GQ Japan」の表紙を独占していたギャロ。マルチな才能、どんなにダサくても、面倒臭くても、彼の魅力は、 20年を過ぎた今も色褪せない。
 
 映画予告編の BGMは、 Yesの「 Heart of the Sunrise」。
 ハイテンションのプログレをバックに映画のカット割りを切り貼りでつないだコマ送り映像。さらに 60年代っぽい、ざらついたフィルムのアナログの質感にシビれた。
 

レイラ(クリスティーナ・リッチ)

映画のキャッチコピーは「最悪の俺に、とびっきりの天使がやって来た」。
 
そんな天使みたいな恋人「レイラ」を演じるのがクリスティーナ・リッチ。
 
子役出身で小柄でコケティッシュが魅力です(日本で言えば安達祐実? ギャロは北村一輝だと思う)
 

 
 彼女は金髪に髪を染め、ラメ入りのブルーアイシャドウ、淡い色のキャミソールに薄手のカーディガンを野暮ったく羽織る。
 
小柄でぽっちゃりでグラマラス。
ファスト・ファッションが好みのよう
 
 彼女の車は汚れている。
 車内はファストフードの包み紙だとか、色々と転がっている。
 
 失礼な言い方ですが、彼女にはどこかに隙がある。
見ていて、悪い男にひどい目に遭わされないか心配になる。
 

ストーリー(あらすじ)

 映画のイントロ部分だけ紹介させてください(ネタバレは極力に避けます)。
 
 ビリーは漏れそうな尿意に耐え、ようやく忍び込んだダンス教室のトイレで放尿し、苦しみから解放され、正気に戻る。
 
 その帰りすがらに、ダンスレッスンを受けていたレイラを誘拐する。
彼女を後ろ手で羽交い締めにして、「言うことを聞け」と脅す。
 

 
ビリーは今朝、刑務所から出所したばかりだ。
無一文で崖っ淵だ。
ビリーは、正気ではない。
 
だから言わんこっちゃ無い。
「レイラはん、あんさんの隙には気をつけなはれや」と僕は言いましたでしょと、一人突っ込みが増す。
 
ビリーはレイラを脅して、彼女の車を奪って、ニューヨーク州バッファローの彼の実家に向かう。
 
マニュアルトランスミッションの厳ついアメ車。ビリーはオートマチック車しか運転できないと小さな声で文句を言う。さらに、車内が汚いと罵る。
面倒臭い男だ。
 
仕方がなく、囚われのレイラが自分で運転する。
 
何で? 正気か? 何故に逃げない?
二人ともズレている。
 
 
ビリーが車を止めろと指示する。
緊張してトイレが近いのか、路上で立ち小便を始める。
 
「今だ、レイラ逃げるんだ!」
「奴は銃を持っていない。それにただの頓馬だ」
 

彼女は逃げない。
彼女は、ハニカミながらビリーに微笑み返す。
この状態で一目惚れ?
これはストックホルム症候群?
 
「ビリーは、重罪で5年服役していた。何かを企んでいるぞ。」
「これからヤバイ展開になるぞ」
レイラの事が心配になる。
 
ここから先は、本作を是非にご覧ください。
 
数年前までアマゾン・プライムで配信していたのですが、残念ながら今はレンタル DVDでしかご視聴になれません。
 
同世代の皆様には、是非是非に見直して欲しいです。
 
 

 
 最後に、「最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた」の映画キャッチコピーは、本当にその通りでした。
 
クリスティーナ・リッチは、女神でした。
 
 小島功先生のビックコミックオリジナルで連載していたコミック「ヒゲとボイン」を読み返したくなりました。
 

 
 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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